S-Yairi YD-302 ネック逆反り調整&リフレット
近年復活したモノではなく当時のジャパンヴィンテージS-Yairiのギター修理です。オリジナリティ溢れるK-Yairiとは違いMARTINの完全コピーを追及したS-Yairi。使用している木材も上質なモノが使われていますので人気があるのもうなずけますね。
逆反りしてしまったネックの調整とリフレットの依頼です。オーナー様が演奏の移動時に長距離バスを利用した際、荷物室の熱気と多湿で急激に水分を吸い込んでしまいかなりネックが逆反りしてしまったようです。ネックの修正にはネックアイロンがよく使われますが、ネックアイロンは指板とネック材の接着剤を溶かして再接着するリペアなので今回のようなケースでは意味を持ちません。しかも当時のS-Yairiのギターにはトラスロッドが入っているのですが調整用の穴がありません!1フレットの下に調整用のナット部分があるとの情報を教えて頂き確認したところナット溝にわずかに穴が確認できます。しかしこれではロッドを回すだけで指板を剥がすという大手術になってしまいます。今後回せれるように改良するご提案をしましたが、とりあえず今回はネックをクランピングしたまま熱をかけて矯正する方法を選びました。
これが1フレットの下の調整用ナット部分がある穴の部分。ネックが反ったら永久保証でメーカー持ち込みだったそうです。しかしメーカーはすでに存在せずですから今後なにかしらのカスタムが必要になってきます。
1時間程、熱を与え24時間クランプしてネックの状態を見ていきます。最終的に合計3回クランプ矯正を施しました。
ゲージも使用して微調整しながらのクランピング。
弦を張りテンションをかけてネックの状態をみたところ矯正はうまくいったようです。
割れや欠けを防ぐためにフレットを外す前の指板にたっぷりとレモンオイルを塗っておきます。
フレットを温めるのも割れや欠けを防ぐために重要です。
ピンボケしていますがこのように温めながらフレットを抜いていきます。
もともと欠けがあった所です。
ローズウッドペーストでパテ埋めして補修。
指板のRを計測します。ナット付近は12Rです。
エンド付近では16Rです。
ネックに弦を張った時と同じテンションをかけて軽くサンディングして指板調整します。
1度、サンディングで出た木屑を掃除してキレイにしておきます。
フレット溝に残る木屑もきれいに取り除きます。
7フレット付近にあるネックの欠けとバインディングの剥がれを修復します。
テフロンシートで壁をつくり欠けてしまったバインディング部にホワイトスーパーグルーを盛っていきます。
ネックの欠けの部分はエポキシをパテ盛りしていきます。
整形後ステインマーカーでマホガニー色に着色。
これでひっかかることもなく演奏に集中できるでしょう。
もともと付いていたフレットを計測してサイズの近いフレットを選びます。
FretBenderで12Rにフレットを曲げていきます。
カットしたフレット材はそれぞれ長さのサイズが違うので間違わないようにナンバリングしておきます。
ネックにバインディングがあるタイプですのでフレットタングニッパーでフレット端のタングを切り落としていきます。
切り落としたあとのバリもヤスリでキレイに除去します。
フレット打ちには、まったく衝撃のない3種類の専用工具を使用します。ハンマーを使わないプレス式ですのでアコースティックギターには最適なツール。ネックブロックにあたるところまでエンド部からはこのプレスツールで作業します。
ネックヒールがある辺りはこの工具でプレスしていきます。
3種類目のプレス工具。ハンマーを使わずRにあわせてプレスするのでフレット浮きも出にくいです。
くいきりでフレットのはみ出た部分をカットします。
Fret Beveling Fileで35°の角度にフレットエンドを削っていきます。
弦を張った状態と同じテンションをネックにかけてストレートな状態に持っていきます。
この状態ですり合わせを行います。
Fret Leveling Filesで出来た傷をフラットファイルで消すように削っていきます。
Fret Fileでフレットトップを丸く削っていきます。
Fret End Dressing Fileでバリ取りをします。
紙やすりで磨いていきます。キズの深い所は#150くらいから始め#1000くらいまで段階的に磨いていきます。
スチールウールで磨いた後、コンパウンドで磨き上げてすり合わせは終了です。
ボディプロテクト板をはずしましょう。
ヘッドのツキ板が汚れているのでペグを一旦すべて取り外してキレイにします。
S-Yairiロゴの入ったオリジナルペグです。グローバー風のペグにまでS-Yairiのこだわりがうかがえます。
ポリッシュで汚れを除去。
コンパウンドをのせて磨いていきます。
ヘッドはギターの顔。とてもきれいになりました。
一度弦を張ってフレットの状態をみます。ビビるポイントをみつけてすり合わせの最終の微調整です。
微調整したポイントをサンドペーパーで磨いていきます。
最終的にコンパウンドで磨きあげます。
ピカピカのフレットは見ていても気持ちいいものです。キラキラした音がしそうですね。
各部チェックしてリペア完了です。リフレットされてとてもレスポンスも良くきらびやかなサウンドを奏でています。