Fender USA ’66 Precision Bass すり合わせ&メンテナンス
CBS傘下後のトラロゴと呼ばれる60年代中期の金色黒縁ロゴのFender66年製のプレベです。名だたるアーティスト達の名演を支えてきたベーシストY氏のプレシジョンの状態は製造後45年程弾き込まれてきた楽器だけにレスポンスが良く素晴らしい個体ですがあちこちに不具合があります。現状も接触不良なのかPUから音がアウトプットされません。
ヴィンテージFenderをじっくり見れることもあまりないので各部のレポートをしながらコンディションチェック&リペアしたいと思います。
ボディにはピックによってえぐり取られたような弾き傷でもの凄い風格を醸しだしています。
ピックガードは経年劣化で縮んでしまっています。あちこちゆがんで欠けてしまっている所もあります。
縮小してしまっていてもやはりオリジナルパーツは存在感が違いますね。
PUバランスのチェック。高さ角度等を書き留めておきます。
弦高のチェック。4弦12フレット上で約2.5mm。
同じく1弦側の弦高チェック。12フレット上で約2.0mm。
倒してしまったことがあるらしくその時に3弦」のフレットが少しつぶれてしまったようです。
フィンガーボードの直進性を計測します。少し逆反りしているようです。
BASSは特に各弦の巻き回数でもテンションは変わってきますので各弦ごとの長さをチェックしておきます。
ボディからネックを取り外します。
ピックガードも取り外します。
POTの確認。137はメーカーナンバーなのでCTS製という事がわかります。6542は65年の42週目製造ということですね。66年プレべですがPOTなどのアッセンブリーはストックからセットアップしますので正常なオリジナルPOTということになります。
オリジナルであると思われるセラミックコンデンサー。
ジャックもスイッチクラフト製です。アッセンブリーはすべて接点復活剤でクリーンアップ。
ブリッジを取り外してクリーニングします。アース線もテスターで確認。
PUを取り外してみると配線が断線しているのがわかりました。
アースプレートにスポンジ材が接着されています。FenderのトラディショナルモデルのBASSはスポンジの弾性だけでPUバランス調整しているのですが経年劣化で弾性がなくなりPUバランス調整が出来なくなってきます。なんらかの処置が必要ですね。
古いスポンジはすべて取り除きました。アッセンブリーのアースプレートも取り外してクリーニングします。
ピックガードは経年劣化で縮んでいるのでPUとも干渉してしまっています。PUがスムーズに動くようにピックガードを加工します。
PUバランス調整が容易に出来るようにプレベ用PUハイトアジャスターを採用。スポンジの中にスプリングが内蔵されているので微調整が可能です。
PUハイトアジャスターのアース線をPOTに落とします。
さてネック関係のリペアです。ネックデートでは66年製が確認できますね。これは66年2月5日製造のCネックということです。トラスロッドも良好に可動しています。
フィンガーボードはマスキングテープで保護します。60年代のネックはラッカーですのでマスキングテープを剥がす時塗装が痛む事がありますのでマスキングテープの端をナイフで切り取りネック裏にいかないようにします。
ポイント的にすり合わせを施しますので3コーナーファイルでつぶれたフレットの角を落としていきます。
フレットファイルでフレットトップを丸くしていきます。
スポンジ研磨材のスーパーファイン~ウルトラファインと番数をあげて磨いていきます。
スチールウールで磨いていきます。
コンパウンドで磨き上げてすり合わせは終了です。
ハカランダ指板にたっぶりとレモンオイルを塗って保湿します。
ピカピカに光るフレットはトーンに曇りも無くサスティンも向上します。
指板Rに合わせて各弦の弦高も微調整。
組み上げて各部調整してリペア完了です。風貌からもわかるとおりかなり弾きこまれているので生鳴りも凄い個体です。メンテ後は音つまりやガリなど無くストレスなくプレイに集中出来るでしょう。