Gibson J-45 リフレット・ナット&サドル作成交換

近年モノのJ-45です。この頃のGibsonはナット&サドルが人工素材の練り物で作りもあまいものが多いです。このギターもミカルタ材と思われるナット&サドルが付いています。ミドルが少しこもったようなトーンですがナット&サドル材を変更して音質の向上改善を狙います。リフレットとあわせてのリペアでまだまだポテンシャルを引き出せそうです。

まずはリフレット。フィンガーボードの割れや欠けを防ぐためにフレットを外す前にたっぷりとレモンオイルを与えます。

フレットを温めるのも割れや欠けを防ぐために重要です。このようにハンダごてで温めながらフレットを抜いていきます。

フィンガーボードのラジアスを調べます。ギブソンは12Rが多いですね。

フレットも12Rに曲げておきます。

ネックブロックに電池ホルダーがマウントされています。フレットプレス時に邪魔なので一度取り外します。

フレット溝に残る木屑もきれいに取り除きます。

フレット打ちには、まったくギターに衝撃を与えない3種類の専用工具を使用します。ハンマーを使わないプレス式ですのでアコースティックギターには最適なツール。ネックブロックにあたるところまでエンド部からはこのプレスツールで作業します。

ネックヒールがある辺りはこの工具でプレスしていきます。

3種類目のプレス工具。ハンマーを使わずRにあわせてプレスするのでフレット浮きも出にくいです。

フレットの打ち込みが完了しました。

くいきりでフレットのはみ出た部分をカットします。

Fret Beveling Fileで35°の角度にフレットエンドを削っていきます。

次はフレットのすり合わせを行います。ストレートゲージで低くなっているポイントをマーキングしました。

マーキングが消えはじめるくらいまでフレットトップを均等にサンディングしていきます。

フレットレベリングファイルで出来たキズを消していきます。

バリ(めくれ)処理をします。

左から2本はフレットエンド処理を施した様子です。ここが滑らかでないとプレイ時に引っかかったり痛みを感じますので丁寧な処理が必要です。

すり合わせで出来たフレットトップの平面を円くして行きます。

スポンジ研磨材のスーパーファイン~ウルトラファインと番数をあげて磨いていきます。

スチールウールで磨いていきます。

コンパウンドで磨き上げてすり合わせは終了です。

ボディプロテクト板をはずしましょう。

ピカピカになったフレットは音もキラキラしそうです。実際サウンドは粒立ちが良くなりサスティーンが向上します。

ナットスロットに付着している接着剤の残りをマイクロノミで除去します。

Nut Seating Filesのギブソン用でナットスロットの微調整。

ナットスロットが仕上がりました。

スラブ材からナットを作成していきます。

ナットスロットにピッタリと収まっていますね。この仕上げが良いトーンを生みだします。

同じく6弦側。密着度が高く弦振動が良く伝わり、結果トーンの向上が期待できるのですね。

えんぴつで形状を書いていきます。

ヤスリで成形していきます。

オリジナルナットから6弦1弦の位置を書き写します。

String Spacing Ruleで正確な弦間隔をはじきだします。

弦溝を切っていきます。荒く削った後、弦を張って弦高の微調整をして仕上げます。

最後に磨きあげてナット工程は完了です。

続いてサドルの作成。ブリッジにレモンオイルを与えます。

スラブ材からサドルを作成していきます。フラットファイルで溝ピッタリになるように幅の微調整をします。

スロットピッタリのサドルが出来ました。

フィンガーボードのラジアスと同じ12Rにサドルトップを成形します。

イントネーターを使ってオクターブチューニングの位置を計測します。

オクターブチューニングの位置をサドル材に書き写し、各弦ごとにサドルの頂点を削りだしてオフセットサドルを作成します。

バイストップを平面に計測してから余分なサドルの底辺を削っていきます。

オフセットサドルの完成。

3弦のペグポストが歪み拡がっていてチューニング精度が落ちています。

バイスでクランプするように支柱部分をプレスして修正していきます。

全体をチェックして全工程終了です。リフレットとナット&サドルを牛骨材に変更した結果「カラっ」とした明るいトーンに生まれ変わりました。イヤなミドルのこもった感じからまさしくGibsonのジャキッとしたサウンドへと変貌しました。