Martin D-28 トップ割れリペア&サドル弦高調整

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移動時にギターに負荷がかかってしまったようでトップに亀裂が20cm程入っています。トップ板はパッチをあてて補強し、外れてしまったブレーシングも再接着します。弦高も少し高いようですのでオーナー様の打弦のタッチを拝見させて頂いた上でなるべく低いセッティングに調整します。

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割れの箇所がズレてしまっています。

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ブレースの外れ箇所の確認。

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少し粘性を薄めたタイトボンドを割れにすり込みます。

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ボンドが乾かないうちに濡れた布で拭き取ります。

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スプルースからパッチを作りました。貼り付ける位置を確認しています。

 

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ボディ奥の手の届かないところは強力マグネットでクランプします。

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強力マグネットが接着されないようにシリコンシートで養生します。

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ブレーシングに接着を流しこみ、すばやくジャッキアップしていきます。トップ板やバック板に負担が掛からないように外側からもやさしくクランプします。

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手前の箇所にパッチをあててクランプします。接着時間はこのまま24時間クランプして固着を待ちます。

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割れはキレイに補修されブレースもしっかりとトップ板に接着されました。

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割れの箇所にはわずかに塗装の隙間が確認できます。

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隙間を埋めるタッチアップ作業に入ります。数日かけてラッカーを盛っていきます。

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ラッカーを充分に乾かした後に仕上げに入ります。余分なラッカーを削り取ります。

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#1500番から水研ぎに入ります。#2000番と番数を上げて滑らかにしていきます。

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最後はコンパウンドでピカピカに仕上げます。

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パッと見ただけでは割れは無かったかのように仕上がりました。

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現状の弦高は6弦12フレット上で約3.2mm。少し高い状態ですね。オーナー様のタッチはとても柔らかい感じでしたのでまだまだ弦高は下げれると判断しました。

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同じく1弦側の弦高は12フレット上で約2.7mm。

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弦高下げの分を算出してサドルの底辺を削り取っていきます。バイスのトップの平面性も忘れずチェックします。

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数種類のヤスリでサドルの底辺を削りフラットに仕上げます。

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ここの底辺の仕上げも音に影響が大きいので妥協は許されません。

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サドルの高さを削ったのでテンションは緩くなってしまいます。ブリッジピンホールの弦溝もほとんど無い状態です。サドル近くまで伸ばしてテンションを稼ぎます。

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ミニソーで切り込みを入れていきます。

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ブリッジピンホール弦溝のエッジ部分を滑らかに仕上げます。

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これでテンションは稼げました。

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調整後の弦高は6弦12フレット上で約2.2~2.25mm。

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同じく1弦側の弦高は12フレット上で約1.9mm。かなり下げれましたのでプレイヤビリティは格段に向上しています。

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全体をチェックしてリペア完了です。ブリッジピンホールの弦溝はほとんど無い状態の個体でしたのでブリッジピンホール弦溝のテンションが生まれて鳴りも深く大きくなりました。