Gibson 57年製 J-50 トップ落ち・割れリペア&ナット・サドル作製交換

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Uシリアルで始まる57年製のギブソンJ-50です。チューニングの精度が良くないとのことで持ち込まれましたがトップが少し落ちています。ボディが歪むとチューニングがあわない・ピッチが悪い・鳴りも悪くなるなどの症状がでます。チェックしたところ合計6箇所もブレースが剥がれて浮いてしまっているのとトップ割れも確認できました。またブリッジのサドルスロットが浅くサドルが前に倒れてしまう状態。これではチューニングは安定しませんのでスロット再掘りこみとナットサドルも作製交換となりました。

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トップブレーシングが浮いている箇所を確認。Xブレースの1本は長く10cmに渡って剥がれています。これでは本来のトーンではない状態でしょう。

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まずはブリッジプレートから接着します。マスキングテープをパレットにしてタイトボンドを置いていきパレットナイフで隙間にすり込んでいきます。

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Scissor Jackというツールでジャッキアップ。トップ板やバック板に負担が掛からないように外側からもやさしくクランプします。接着時間はこのまま24時間クランプして固着を待ちます。

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ギブソンによくあるフィンガーボードに沿ってサウンドホールが割れる不具合。以前にリペアされていましたが段差の修正もされてなくパッチには竹の欠片が無造作に貼られていたので除去しました。

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まずは割れにタイトボンドを刷り込むように流し込みます。スキマが無いところには少し粘度を薄めたボンドを流し込みます。

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ブレーシングのジャッキアップと共にサウンドホール割れもクランピング。ジャッキアップでトップ板やバック板に負担が掛からないように外側からもやさしくクランプします。

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サウンドホール割れにパッチをあてているクランプ作業。

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スプルースペーストを作ります。

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スプルースペーストで割れの隙間をパテ埋めします。

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軽く成形しました。

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ステインマーカーで色合わせします。

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最後にラッカーを盛ってサウンドホール割れリペアの完了。パッと見ただけではわからないくらいに修正できました。

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トップ割れには軽く薄めたタイトボンドをすり込むように流し込みます。

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クランプとジャッキを使ってパッチやブレーシングを留めていきます。固着には24時間各ポイントで待ちますのでここまでで数日かかっています。

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ボディ内部の修正図。

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サウンドホール割れにもピッタリのパッチを作成して留めてあります。

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それではナット作業に入ります。当て木をかましてからハンマーで軽く叩いてナットをはずします。

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ナットスロットに付着している接着剤の残りをマイクロノミで除去します。

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Nut Seating Filesのギブソン用でナットスロットの微調整。

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ナットスロットが仕上がりました。

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 フラットファイルで幅ピッタリに仕上げていきます。

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ナットスロットにピッタリ収まるように成形した後おおまかなサイズにカットしていきます。

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オリジナルナットから6弦と1弦のポイントを書き写します。

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専用ゲージを使用して正確な弦間隔をはじき出します。

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微調整前にナットを磨いておきます。

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ボンドでナットを接着。

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弦溝を切っていきます。荒く削った後、弦を張って弦高の微調整をして仕上げます。

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ナットスロットにピッタリと収まっていますね。この仕上げが良いトーンを生みだします。

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同じく1弦側。密着度が高く弦振動が良く伝わることでトーンの向上が期待できます。

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弦溝角度の微調整などを繰り返してナットが完成しました。

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問題のスロットの浅いブリッジ。1.5mm程しか無い現状にPU素子もインサートされています。ピッタリのサドルを作成しても倒れてしまうことが考えられますのでスロットを深く掘りこみます。

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Saddle Routing Jigを使ってルーター作業。

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サドルスロットはキレイに深くフラットに仕上がりました。

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スラブ材からサドルを作成していきます。

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フラットファイルで溝ピッタリになるように幅の微調整をします。

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スロットピッタリのサドルが出来ました。

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イントネーターを使ってオクターブチューニングの位置を計測します。

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オクターブチューニングの位置をサドル材に書き写し、各弦ごとにサドルの頂点を削りだしてオフセットサドルを作成します。

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#1500から始めて最終的に#12000まで番数をあげて磨いていきます。

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オフセットサドルの完成。

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ブレーシングリペアをした結果トップ落ちは修正できました。

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1箇所だけペグブッシュが紛失していましたので新しいブッシュを追加。これで少しはチューニング時にも安心できますね。

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永年の使用でフィンガーボードには汚れがビッタリ。

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揮発性の高いZippoオイルで汚れを落とします。

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全体をチェックしてリペア完了です。リペア前もかなり鳴っていましたがブレースのリペアとナットサドルをヴィンテージボーンに変更した結果、凄まじい鳴りへと生まれ変わりました。少しパワーが増して若返ったような印象です。