Fender 77年製 Stratocaster ネック再製
Sシリアルと呼ばれる70年代のストラトキャスターです。フロイトローズが流行った頃にロックナットの加工を施した所ネックが折れて帰ってきたというギターです。メイプルネックが折れるのはなかなか無いのでカスタマイズ時にかなりの負荷がネックに掛かったのですね。随分長い歳月が過ぎていますが折れ箇所はキレイですので修復していきます。
ロックナットのボルトを仕込む穴です。この穴のルーター加工の過程でネックが折れたと思われます。
折れ箇所はひび割れているだけの感じですので気をつけながらクランプで割れの口を拡げます。
少し薄めたボンドを割れ箇所の奥深くまで注入します。
クランプして行くとボンドがどんどん溢れてきますので乾かないうちに拭き取ります。
クランプして72時間程経過を待ちます。
ボルト穴をメイプル材で塞ぎます。
木目にラインを引いてネックの木目と合わせます。
タイトボンドを塗って打ち込みます。
補強有りのリペアですのでネックにルーターで彫り込みを入れます。
ボルト穴を無くすようになるポイントに2箇所、彫り込みを入れました。
メイプル材で補強材を作成します。
ピッタリサイズに加工していきます。
補強材もクランプして72時間、固着を待ちます。
ダボを成形していきます。
ロックナットで失われたナット部分のネックを再製していきます。まずはメイプル部分から開始します。
この頃の指板はラウンドフィンガーボードです。スラブボードなら加工は楽ですがオリジナルに近づける為にメイプル部も7.25Rのラジアルになるように加工します。
7.25Rのラジアルになりました。
次はローズ部分の加工です。なるべく似た木目を探して切り出します。
接着部を7.25Rに仕上げていきます。
ローズ部も接着固定を待って加工に入ります。
いろんな道具を使って仕上げていきます。
形はなかなか良さそうです。
トラスロッドの穴を成形していきます。
精密さが求められるポイントですので細部までヤスリで仕上げます。
スケールからハジキ出してナットスロットの位置をチェックします。
ナットスロットも7.25Rになるようにルーター加工します。
焼けた色を再現するために作ったラッカーを塗っていきます。
数日かけてラッカーを厚く塗っていきます。
数日掛けてラッカーを充分に乾かした後に仕上げに入ります。余分なラッカーを削り取りサンドペーパーの番数を上げて滑らかにしていきます。最後はコンパウンドでピカピカに仕上げます。
ネックの再製は仕上がりました。
R処理中のナット。ヴィンテージフェンダーの7.25Rに調整します。
きれいに底辺のR処理が出来ました。
キッチリと溝に収まりました。この後、形を整えていきます。
String Spacing Ruleで正確に各弦の間隔を写していきます。
弦のテンションや角度、弦高を考えて正確に溝を切っていきます。
ナットが仕上がりました。ストリングガイドはオーナー様が取り付けるということで現在付いていませんがストリングガイドありきのセッティングでナットの溝は仕上げてあります。
整形後のナット部分を6弦側面から見た様子です。きっちりと溝に収まっているのが確認できます。
同じく1弦側。こちらもきっちりと溝に収まっているのが確認できます。
折れ箇所の図。オーナー様が自らオイルフィニッシュを施すということでこのままの状態でのお渡しです。
組み上げて全体をチェックしてリペア完了です。ネックは元の姿に戻りました。この頃のストラトはスキャロップであったりフロイトローズであったりとカスタマイズする事が流行りましたからオリジナルの状態のものも年々少なくなってきているのではないでしょうか?でも自分好みにカスタマイズするのも、はたまたオリジナルに戻していくというのも楽しいものですね。