Gibson Historic Collection 1942 J-45 2006年製 ナット&ロングサドル交換 ブレース剥れ
オリジナルの1942年製J-45をレントゲン写真撮影で内部構造の細部まで再現したヒスコレのJ-45です。ナット&サドルをヴィンテージボーンで作成交換のご依頼です。ボディ内部をチェックした所1箇所だけブレースの剥れが確認できましたのでそちらもリペアすることになりました。
さすがのヒスコレですね。各部の材や作りも素晴らしいですがギターそのものに存在感があります。
1箇所のみブレース剥がれが確認できました。マスキングテープをパレットにしてタイトボンドを置いて隙間にすり込んでいきます。
すばやくジャッキアップしていきます。トップ板やバック板に負担が掛からないように外側からもやさしくクランプします。接着時間はこのまま24時間クランプして固着を待ちます。
それではナット作業に入ります。当て木をかましてからハンマーで軽く叩いてナットをはずします。
ナットスロットに付着している接着剤の残りをマイクロノミで除去します。
ナットスロットが仕上がりました。
ナットスロット際のヘッドの塗装欠けを補修していきましょう。Gibsonによくある症状ですね。
ブラックのスーパーグルーを盛っていきます。
ノミやカミソリで盛り上がった部分を削りツライチにして仕上げていきます。
ナットスロットの横にわずかな塗装欠けがありました。着色していきましょう。
同じく1弦側も着色します。
スラブ材からナットを作成していきます。ヘッドのつき板の高さ0.2~0.3mmの溝ですがキッチリ、ピッタリに収まるようにします。
ナットスロットにピッタリと収まっていますね。この仕上げが良いトーンを生みだします。
同じく1弦側。密着度が高く弦振動が良く伝わり、結果トーンの向上が期待できるのですね。
オリジナルナットから6弦1弦の位置を書き写します。
String Spacing Ruleで正確な弦間隔をはじきだし、その後専用ファイルで弦溝を切っていきます。
ギブソンのヴィンテージはナットの横にラッカー塗装が乗っているものが多いですね。オリジナルナットかどうかの判断基準であったりもします。塗装欠けの修復に入りますがヴィンテージ同様ナット横に少しだけラッカーを乗せていきましょう。
数日かけてラッカーを盛った後にラッカーを充分に乾かしてから削り取り仕上げに入ります。。
#2000以上の細かいペーパーで磨いていきます。
最後はコンパウンドで磨き上げます。
塗装欠けも修復出来ましたし、わずかにナットにラッカーが乗っているのでヴィンテージ感が増していますね。
微調整を繰り返して最後に磨きあげてナット工程は完了です。
スラブ材からサドルを作成していきます。
フラットファイルで溝ピッタリになるように幅の微調整をします。
スロットピッタリのサドルが出来ました。
オリジナルのサドルから大体の形状を書き写します。
ここでフィンガーボードのラジアルを計測しておきます。
サドルを大まかにカットしていきます。
フィンガーボードのラジアルと同じRでサドルトップを仕上げます。
弦高の微調整です。何度も弦を張っては弦高を計測して余分なサドルの底辺を削っていきます。
サドルトップの仕上げに入ります。#1500から始めて最終的に#12000まで番数をあげて磨いていきます。
ロングサドルですのでサイドをブリッジの形状にカットしていきます。
ツライチになるように微調整を繰り返します。
6弦側のサイド部分。これでサドル工程も完了です。
半音下げチューニングでも演奏されるというオーナー様ですのでその点も考慮しながら弦高はご要望の低いアクションでの微調整を繰り返しました。最終的に弦高は6弦12F上で約2.1~2.2mm。
1弦12Fの弦高は約1.8mmで調整。
しかしロングサドルにファイヤーパターンピックガードってめちゃくちゃカッコいいです。
全体をチェックしてリペア完了です。アディロンダックTOPやニューハカランダとも呼ばれるマダカスカルローズブリッジなど現在としては最高峰の仕様のJ-45です。ナット&サドル交換で6弦がドスンと響くようになり、全体的に張りの有るサウンドへ変化した気がしますとオーナー様から喜びのメールを頂きました。