Taylor 114ce ナット&オフセットサドル作成交換 PU不具合調整
Taylorの100番台シリーズのGrand Auditoriumボディシェイプ114ceです。弦高下げの依頼でサドル&ナット交換となりました。サドルに関してセットアップしてからPUに不具合が出ましたのでそちらも調整となりました。
現状の弦高は6弦12フレット上で約3.0mm。少し高い状態ですね。
同じく1弦側の弦高は12フレット上で約2.5~2.6mm。
ミカルタ製と思われるオリジナルナット。ヘッドのつき板との境目にナイフで切り込みを入れておきます。
ハンマーで軽く叩いてナットをはずしますがこのギターはナットが瞬間接着剤的なもので留められていると思われます。動く気配がなくネックの負担を考慮して崩し取る事にしました。
ルーターでナットを崩しとっていきます。
ルーターやニッパーを使用して少しずつ崩していきます。
ナットスロットに付着している接着剤の残りをマイクロノミで除去します。
Nut Seating Filesでナットスロットの微調整。
ナットスロットが仕上がりました。
ナットをブランク材から加工していきます。フラットファイルで幅ピッタリに仕上げていきます。
スロットピッタリに厚み調整完了です。
カットするポイントを書いていきます。
おおまかなサイズにカットしていきます。
ナットスロットにピッタリと収まっていますね。この仕上げが良いトーンを生みだします。
同じく1弦側。密着度が高く弦振動が良く伝わり、結果トーンの向上が期待できるのですね。
比較的新品に近い楽器です。まだフレットに弦跡は付いていませんので6弦1弦を適正な位置になるように調整。
String Spacing Ruleで正確な弦間隔をはじきだします。
弦溝を切っていきます。荒く削った後、弦を張って弦高の微調整をして仕上げます。
微調整を繰り返して最後に磨きあげます。
ナット工程は完了しました。
スラブ材からサドルを作成していきます。
スロットピッタリのサドルが出来ました。
フィンガーボードのラジアルを計測して同じRでサドルトップを仕上げます。
イントネーターを使ってオクターブチューニングの位置を計測します。めったに無いのですがオクターブポイントがスロット端に集中しています。稀にこうゆう事もあるんですね。セオリーだけでは無いところが楽器リペアの面白い所です。
頂点を端にしてサドルの完成。#1500から始めて最終的に#12000まで番数をあげて磨いていきます。
弦高の微調整です。バイストップを平面に計測してから余分なサドルの底辺を削っていきます。
数種類のヤスリでサドルの底辺を削りフラットに仕上げます。
サドル底辺は平面性を出す仕上げが音に影響しますのでとても大事です。
最終的に弦高は6弦12F上で約2.1~2.2mm。
同じく1弦側の弦高は12フレット上で約1.7~1.8mm。元の弦高はかなり高めでしたのでプレイヤビリティは格段に向上しています
頂点が端に集中したオフセットサドルの完成。しかしこのオクターブポイントが原因でPUの不具合が発生しました。弦のテンションが均等に掛かっていないようでPUバランスが非常に悪く特に1弦のみ出力が低い状態です。原因を突き止めたいと思います。
テイラーオリジナルのES-Tピックアップのピエゾ素子。セラミックと思われる素子を厚いビニールで包んでいます。ビニールで包むのはピエゾにありがちな固い音色を柔らかくする事かと思われます。
サドルスロットのフラットさを確認中。問題は無いようです。
ブリッジピンホールの弦溝角度をサドル近くまで引寄せテンションを稼ぎます。
1弦のテンションは確保できました。しかしまだ不具合は収まらず他の弦でもバランスが悪い状態。ここからは緻密な作業になりましたので下記に結果をメモしてみましたので確認してみてください。
図にもありますがサドルの頂点が前面に集中したため弦のテンションがPU素子の端ビニール部分に掛かりバランスが悪くなっている。通常サドルのように真ん中に頂点を持ってきて圧を均等に掛かるようにするか悩みましたが下記のようにして不具合を調整しました。
サドルはスロットピッタリです。しかしテンションが1点に集中したためPU素子にかかる圧が分散していると判明したため、底辺の角を取り弦圧がPU素子の真ん中に行くように調整しました。
ナット&サドルをヴィンテージボーンに変更した結果とてもレスポンスの良いきらびやかなサウンドに変貌しました。PUの不具合が発生してオーナー様にはご迷惑をお掛けしましたが、どうにか原因も判明して調整する事が出来ましたので一安心です。