Ovation Elite 1758 12弦モデル ブリッジ一体型サドル作成&エポーレット補修 ナット作成交換
Ovationディープボディの12弦モデル Elite 1758です。オリジナルのサドルには前オーナーが弦高を下げるためにか深く溝を掘っているので変更して欲しいとの依頼です。詳しく調べたところオリジナルサドルの構造はピエゾセンサーを埋め込んだスポンジ状の上にプラスチックのカバーでサドルにしています。当時のハウリング対策等でこうゆう構造になったのでしょう。生音の音質向上改善のためにも牛骨でサドルを作る事にしました。その他エポーレット(サウンドホールの装飾)も補修していきます。
これがサドルの構造です。スポンジの上にカバーのようなプラサドル。これがあのオベーションのモコモコした音の元だったのですね。ラインアウトが前提でこうゆう構造だったのでしょう。このオリジナルPUサドルにいつでも戻せるように新たにサドル一体型PUを作成します。
ブリッジはこのようになっています。この溝ピッタリにマホガニーでブリッジ台座を作成します。
ブリッジと同じ素材のホンジュラスマホガニーから切り出します。
適度な大きさにカット。
フラットファイルで溝ピッタリになるように幅の微調整をします。木材でサドルを作る要領ですね。
スロットピッタリの台座が出来ました。いつでもオリジナルに戻せるように接着はしません。
ノミやヤスリでブリッジの形状を仕上げていきます。
サンドペーパーで仕上げていきます。
ブリッジの完成。
イントネーターを使ってオクターブチューニングの位置を計測します。
新しくサドルスロットを掘ります。Saddle Routing Jigを使ってルーター作業。
オリジナルサドルと見た目も同じようなタイプにするため6mmのスロットを掘りました。サドルスロットにピエゾ素子用の穴を開けます。
オーバーサイズのヴィンテージボーンスラブ材からサドルを作成します。
スロットピッタリのサドルが出来ました。
フィンガーボードのラジアルを計測して同じRでサドルトップを仕上げます。
オクターブチューニングの位置をサドル材に書き写し、各弦ごとにサドルの頂点を削りだしてオフセットサドルを作成します。
オリジナルに見た目も近いサドルが出来上がりました。
これがオリジナルPUシステム。2.5 Ø のプラグでプリアンプに繋がっています。
新しいPUピエゾ素子に2.5 Ø のプラグを配線します。
ピエゾ素子にはFISH MAN社製のアンダーサドルPUをチョイスしました。
見た感じオリジナルに近いオフセットサドルが出来上がりました。
エポーレットに欠けている箇所があります。
木目の近い材から補修パーツを切り出します。今回はマホガニーとカリンを使用しました。
おおまかにカットした後にエポキシで接着します。
クランプ中。このまま固着を待ちます。
固着後カットに入ります。
周りと高さを合わせていきます。
ルーターで形を整えます。
埋木は完了しました。
着色に入ります。
大きく割れている所もあります。
似た色の木粉とボンドでパテを作ります。
割れにすり込んでいきます。
乾く前に少し湿らした布で余分なパテをふき取ります。
パテ補修の完了。
着色後ラインを描いて薄くラッカーで仕上げました。エポーレットはこれで仕上がりです。
オリジナルのナット。素材はプラスチックと思われます。人工素材のナットですので牛骨に変更して音質の向上改善を狙います。
ナット作業に入ります。木を当ててからハンマーで軽く叩いてナットをはずします。
ナットスロットに付着している接着剤の残りをマイクロノミで除去します。
ナットスロットが仕上がりました。
ヴィンテージボーンのスラブ材からナットを作成します。フラットファイルで幅ピッタリに仕上げていきます。
ナットスロットにピッタリ収まるように成形した後おおまかなサイズにカットしていきます。
ナットスロットにピッタリと収まっていますね。この仕上げが良いトーンを生みだします。
同じく1弦側。密着度が高く弦振動が良く伝わることでトーンの向上が期待できます。
12弦ですのでオリジナルナットからすべてのポイントを書き写します。
弦溝を切っていきます。荒く削った後、弦を張って弦高の微調整をして仕上げます。
弦溝角度の微調整などを繰り返してナットが完成しました。
12弦なので張力が強くチューニングするとボディトップのブリッジ近辺が盛り上がるようです。ブレーシングの剥れは確認できませんでしたがファンブレースなので張力には弱いようです。オーナー様からブレースの追加をお願いされました。
大きめのブレースを1本追加します。
ジャッキアップやクランプでブレーシングを接着固定します。
追加されたブレースの図。
微調整を繰り返して弦高は6弦(太い方の弦)12F上で約2.3mm。
1弦12Fの弦高は約2.0mmで調整。
全体をチェックしてリペア完了です。今回のサドル材の変更で生ギターとしてのポテンシャルは最大限に引き出せたようです。オベーションとは思えない鳴りでハコ鳴りしています。もちろんラインアウトされた音色もその鳴りを増幅しているのでバージョンアップされたトーンです。弾いていてとても気持ちいいギターに生まれ変わりました。