Martin 2-17 1929年製 サイド板割れ接着&タッチアップ
プリウォーマーチンの2サイズの17モデルです。ヘッドにロゴは無くヘッド裏に刻印がされている頃のモノ。1929年と言えば世界大恐慌の年ですからものすごい歳月を感じます。
衝撃からかサイド板に割れが大きく走っています。接着補強してタッチアップで割れ跡が目立たないように仕上げましょう。
なんともかわいいサイズですね。NY工房の頃はギターと言えばまだ小さいサイズが主流でした。それでも2サイズは小さめだったのではないでしょうか?
割れ箇所を確認していきます。右サイド板に20cm以上にわたって亀裂が入っています。
左サイドにも打痕による割れとスクラッチ傷を確認。
マホガニーのつき板からパッチを作成していきます。
切り出したつき板を2枚貼り合わせてパッチ材にします。
クランプして固着を待ちます。
割れに軽く薄めたタイトボンドをすり込むように流し込みます。
スプールクランプでサイド板をしっかりと接着していきます。段差をなるべくなくして平面に近づくまで何度も微調整します。
このまま24時間固着を待ちます。
つき板から作成した板をボディと同じように曲げていきます。使用しているのは昔に自作したベンディングアイロン。
このように曲げました。ボディと同じカーブを描いています。
曲げた板からパッチの形状に切り出しました。順番を間違わないようにナンバリングしてあります。
クランプがかけれないので強力マグネットでクランピング。
こちらもボディと同じカーブに曲げました。
強力マグネットでクランピング。
塗装の段差を無くすようにサンディングします。
数日かけてラッカーを厚塗りしていきます。
ラッカーを充分に乾かした後に仕上げに入ります。余分なラッカーを削り取ります。
水研ぎ~コンパウンドで磨き仕上げていきます。
長い割れ跡もパッと見ただけではわからないくらいに修正できました。
左サイドのスクラッチ傷と割れ跡もほとんど解りらないように仕上がりました。
パッチはこのように当てられ割れの補強と進行を防ぎます。
左サイド板のパッチもこのように施してあります。
1度ネックリセットが行われているようです。13フレットに穴が2つあるのがわかりますでしょうか?
ハカランダ粉からパテペーストを作ります。
ハカランダパテで穴を埋め補修。
ボディくびれ部にバック板の収縮から隙間が確認できます。
こちらもハカランダパテで補修します。
余分なパテは固まらないうちに拭き取り仕上げます。
各部チェックしてリペア完了です。古い楽器ですがまだまだ現役のギターですね。100年経ったギターでも手をかければ現役を保てます。この先100~200年経っても愛着を持つオーナー様とリペアマンさえいればヴィンテージギターもヴァイオリンのように後世に引き継いでいけるだろうと思います。