Gibson サザンジャンボ割れリペア
TOP板が大きく割れているギターのリペアです。単板 は木目に沿って割れやすいものです。湿度の少ない冬期は特に割れが発生しやすい季節と言えるでしょう。
くびれバインディング付近は1mm程の隙間が確認できます。
ボディ内部からも鏡を入れて確認したところ隙間からの光が差込んでいるのと割れにそってランニングにも亀裂がありブレーシングも浮いてしまっています。
まず割れの隙間を塞ぐのに専用のジグを作成します。
ギブソンのラウンドショルダーボディ用ジグが出来ました。
一般的にアコースティックギターの事をフラットトップといいますがトップ板はまったくの平面ではありません。ゆるやかなアーチを描いていますし経年劣化からブリッジも盛り上がってきているギターを多く見かけます。
ただ接着したのではトップ板に大きく段差がついてしまうので凹んでいる所はジャッキアップします。
同じく盛り上がっている所はやさしく押さえつけます。
段差をなるべくなくして平面に近づくまで何度も微調整します。
ここでタイトボンドを割れに刷り込むように流し込みます。スキマが無いところには少し粘度を薄めたボンドを流し込みます。
乾く前に少し湿らした布で余分なボンドをふき取ります。
サイドのくびれ用ジグは長いハタ金を使ってクランプします。このまま丸1日ボンドが乾くのを待ちます。
割れの強度と再発の予防にはパッチを使用します。スプルース材からいろんな形のパッチを作成しました。
1番スキマが大きく開いていた部分には強度のためにブレーシングを追加するような長いパッチを接着します。
トップ板のブレーシングの隙間にはマスキングテープをパレットにしてタイトボンドを置きパレットナイフでブレーシングの隙間に流し込みしたあとジャッキアップします。
ボディ奥のトップ板の裏側にパッチをポイントにピッタリ貼り付けるのは容易ではありません。そんな時にはフレキシブルアームが強い味方です。
パッチをポイントに貼ってクランプしボンドが乾くのを待つという動作を1つずつ繰り返します。
クランプも届かない奥には強力マグネットでクランプします。
次はボディバック奥のブレーシング浮きを再接着します。
こちらもマスキングテープをパレットにしてボディ内に垂らさないようにシリンジにタイトボンドを入れてポイントに置いていきます。
ボディ奥のジャッキアップは難度が高いので何度もシュミレーションをして本番に備えます。パレットナイフでブレーシングの隙間にタイトボンドを流し込みしたあとジャッキアップしますが持ち上げすぎないようにボディ外側からも軽く押さえつけます。
すべての工程が終わり割れは塞がりました。1mm程あった隙間もピッタリ塞がりました。 本来ならここで傷跡を隠すためにタッチアップという塗装割れを塞ぐ作業に取り掛かるのですが予算の都合もありこのままでリペアは終了です。大きく傷跡の残るギターっていうのもブラックジャックっぽくてなかなかカッコいいかも知れませんね。(笑)湿度の面等少し心配が残りますが強度の部分は大丈夫でしょう。
弦を張って全工程終了です。ブレーシングや割れがくっついてボディの鳴りも良くなりました。