Mory JAZZ MASTER MODEL 60-70s レストア
日本には60-70年代数多くのギターブランドがありましたね。いわゆるビザールと呼ばれるギターたちです。このMoryもその一つ。ジャズマスターのコピーモデルですが全体的な雰囲気がとてもカッコイイギターです。使えるギターに蘇らして欲しいとのご依頼ですのでレストアしていきます。
まずはフレット交換から。フィンガーボードの割れや欠けを防ぐためにフレットを外す前にたっぷりとレモンオイルを与えます。
フレットを温めるのも割れや欠けを防ぐために重要です。このようにハンダごてで温めながらフレットを抜いていきます。
元のフレットタングの長さを計測して近いサイズのフレットワイヤーを選びます。
ここでナットを取り外しておきます。ナットが接着剤で強く固められているようです。ルーターで崩し取ることになりました。
ルーターやニッパーを使用して少しずつ崩していきます。
Nut Seating Filesでナットスロットの微調整。
ナットスロットのクリーニングが完了しました。
フィンガーボードのラジアスを調べます。
計測したラジアルで指板修正していきます。
フレット溝に残る木屑もきれいに取り除きます。
フレットも7.25Rに曲げておきます。
Fret Press Systemはプレス式の専用工具。これを使用することでネックへの負担を無くしてリフレットしていきます。
フレットエンドをくいきりでカットします。
Fret Beveling Fileで35°の角度にフレットエンドを削っていきます。
次はフレットのすり合わせを行います。ストレート(真直度)を精密に測るスケールで隙間が無いかチェックします。 コピー用紙を挟んだり光をあてたりしてフレットトップの高さをあわせていきます。
ストレートゲージで低くなっているポイントをマーキングしました。
マーキングが消えはじめるくらいまでフレットトップを均等にサンディングしていきます。
すり合わせで出来たフレットトップの角を専用ヤスリで丸くして頂点を出していきます。
すり合わせ時の傷が深い時には#150くらいからはじめて徐々に番目をあげていきます。
#1000くらいまでペーパーで磨いてからスチールウールで磨きます。
最終的にコンパウンドを使用して磨き上げます。
リフレット完了です。ピカピカになったフレットは音も粒立ちが良くなりサスティーンが向上します。
オリジナルのブリッジは精度の低いパーツでした。オーナー様からナッシュビルタイプを供給して頂きましたのでそちらをマウントしていきます。
しかしこの頃のビスはJIS規格です。ISO規格のパーツが取付できるように加工します。
タップでオリジナルパーツにISO規格のネジピッチを切り込んでいきます。
ナッシュビルブリッジに変更完了です。これでオクターブチューニングの精度が向上しました。
ブリッジ関係は完了です。
アッセンブリーをPU以外は全て交換することに。
国産製のPOTが付いていた為CTS製等は加工しないと取り付けできません。ボリューム穴をリーマーで拡げていきます。
アッセンブリーはオリジナルジャズマスターを意識した内容です。クロスワイヤーにCTS1MΩPOTやスイッチクラフト製ジャック・スイッチ、キャパシタはビタミンQで統一しました。
スラブ材からナットを作成していきます。
ナットスロットにピッタリ収まるように成形した後おおまかなサイズにカットしていきます。
形が仕上がったらここで軽く磨いておきます。
String Spacing Ruleで正確な弦間隔をはじきだします。
弦溝を切っていきます。荒く削った後、弦を張って弦高の微調整をして仕上げます。
ナット工程は完了です。
スロットにピッタリと収まったナット。この仕上げが良いトーンを生みだします。
同じく1弦側。密着度が高く弦振動が良く伝わり、結果トーンの向上が期待できるのですね。
ペグ関係も一度取り外してクリーニング&グリスアップ。
ブリッジ側のテンションが緩い状態でしたのでネックポケットのシムはかなり多めに入れました。
テンションはある程度稼げました。このタイプのギターはテールピースのデザインからテンションが弱く、弦落ちが多いのですがブリッジをナッシュビルタイプに変更後は、ブリッジ駒の弦溝があるので弦落ちはある程度解消されています。
全体をチェックしてレストア完了です。ビザールは指板材が良くないモノが多いですがこの個体は質の良いローズが使用されていたりピックガードがアンティーク調で雰囲気がありますね。ジャズマス特有のトレブリーでジャキッとしたサウンドをアウトプットしています。