Martin D-35 ‘72年製 ブレーシング剥れ・ブリッジ浮き・弦高調整
1972年製のD-35です。ブレースの剥れとブリッジ浮きが確認出来たのとPUの仕込があまり良くないので修正、サドル周りを見直して弦高調整となりました。
各部チェックしていきます。まずは弦高から。
現状の弦高は6弦12フレット上で約3.25mm。少し高い状態ですね。
同じく1弦側の弦高は12フレット上で約2.75mm。
ブリッジの浮き部分。
ブリッジ後部が全体的に1mmぐらい剥れてきています。早めに処置しておけば進行を防げます。
マーチンクラック修理が行われているようでオーバーサイズのピックガードに変更されています。
PUが変更されたとの事ですが以前のPU関係がマウントされたままの状態。取り外しましょう。
カワセの古いPUシステム。重厚な造りで重いので取り外します。
シリアルナンバーが出てきましたね。72年製が確認出来ました。
ブレース剥がれ箇所の確認。ブレースの剥がれは早めに処置しないとボディが歪む原因となります。バック板ですがビビリの原因になったり鳴りも悪くなるなどの症状がでます。
ここも剥れています。
トータル4箇所剥れていました。
それではブリッジ浮き補修に入ります。マスキングテープで養生して液体膠をすり込みます。
クランプすると接着剤がどんどんはみ出してきますので乾く前にキレイに除去します。
しっかりとクランプして固着まで24時間待ちます。
ブリッジ浮き補修の完了。
マスキングテープをパレットにしてタイトボンドを置いていきパレットナイフで隙間にすり込んでいきます。
ジャッキアップするとボンドが溢れてきますのでボンドが乾かないうちに濡れた布で拭き取ります。
ジャッキアップでトップ板やバック板に負担が掛からないように外側からもやさしくクランプします。
ブレーシングのジャッキアップはこのようにしっかりと行います。このまま24時間固着を待ちます。
別箇所のブレーシング剥れもジャッキアップして修正。
マーチンクラックの修正はピックガードを張り替えていただけのようです。割れの予防にはパッチを使用した方が再発を防げます。1箇所だけですがスプルースからパッチを作り貼り付けましょう。
クランプを使ってパッチを留めていきます。
ボディ内部の修正図。
PU素子の中には先端の反応が強すぎて弦バランスが悪くなるタイプのモノがあります。スロットに横穴を開けて先端部を逃がすのですがその処置が行われていませんでした。しっかりとした処置を行っていきます。
ドリルで横穴を開けてヤスリで修正していきます。
マーチンのスロットに対して太いドリルでPU穴を開けてしまったようです。目立つので修正していきます。
ブリッジのウイング部にかすかな割れも確認できたので修正します。
エボニー材の粉末からパテペーストを作ります。
割れ・欠け部分にパテ盛りしていきます。
パテが乾いたら磨いて修正。
目立たなくなりました。
ウイング部も目立たなくなりましたね。
弦高の微調整です。バイストップを平面に計測してから余分なサドルの底辺を削っていきます。
数種類のヤスリでサドルの底辺を削りフラットに仕上げます。
弦高を下げるとテンションが減ります。テンション確保のために弦誘角度溝を切り込みます。
ミニソーでサドルスロット近くまで溝を切っていきます。
専用ヤスリで滑らかに仕上げます。
サダルの高さを削って弦高を低くしましたが弦誘角度溝を切り込みテンションは稼げました。
最終的に弦高は6弦12F上で約2.25mmで調整。
1弦12Fの弦高は約1.9mmまで下げれました。
全体をチェックしてリペア完了です。ブレース修正を施してボディ全体から鳴るように蘇り、低いアクションでとても弾きやすくなりました。PUの弦バランスも正常にアウトプットするように修正出来ました。