Takamine PTN-006 80年代製 ナット&変形オフセットサドル作成・ブリッジピン調整
タカミネのPTN-006です。この個体は珍しい塗りつぶしのブラックフィニッシュ。少し現状より低めのアクションでの弦高調整とオクターブを確実にあわせるように少し変わったサドルを作成する事になりました。
トップサイドバック総ハワイアンコア単板とのスペックです。サウンドホールからフレイムの入ったコア材が確認できます。バックジョイントの横の木目が少しセンターからズレていますね。それを隠す為のブラックフィニッシュだとしたらかなりのレアモノです。
さて現状の弦高チェック。6弦12フレット上で約3.1~3.2mm。少し高めですね。
同じく1弦側の弦高は12フレット上で約2.1~2.2mm。
ナット工程からスタートです。木を当ててからハンマーで軽く叩いてナットをはずします。
ナットスロットに付着している接着剤の残りをマイクロノミで除去します。
Nut Seating Filesでナットスロットの微調整。
ナットスロットのクリーニングが完了しました。
ヴィンテージボーン(牛骨)のスラブ材からナットを作成していきます。
スロットピッタリに厚み調整していきます。
スロットにピッタリと収まったナット。この仕上げが良いトーンを生みだします。
同じく1弦側。密着度が高く弦振動が良く伝わり、結果トーンの向上が期待できるのですね。
ナットスロットにピッタリ収まるように成形した後おおまかなサイズにカットしていきます。
形を仕上げていきましょう。
形が仕上がったらここで軽く磨いておきます。
オリジナルナットから6弦1弦の位置を書き写します。
String Spacing Ruleで正確な弦間隔をはじきだします。
弦溝を切っていきます。荒く削った後、弦を張って弦高の微調整をして仕上げます。
ナット工程は完了です。
イントネーターを使ってオクターブチューニングの位置を計測します。
低音弦のオクターブポイントが大幅にスロットを越えてしまっています。一体型PU搭載モデルですのでスロットの位置変更も大工事になってしまいます。変形サドルでオクターブポイントに対応して作成していきましょう。
ここでフィンガーボードのラジアルを計測しておきます。
オリジナルサドルは牛骨で作成精度も良かったのでオリジナルにオフセット加工を施します。フィンガーボードと同じRでサドルトップを仕上げます。
計測したオクターブ補正位置をサドル材に書き写し、各弦ごとにサドルの頂点を削りだしてオフセットサドルを作成します。
オクターブの調整が出来ましたら磨いていきます。
弦高はサドル底辺の加工で微調整します。長年のノウハウから弦高下げの分を算出してサドルの底辺を削り取っていきます。
5.6弦部分をカットします。
幅の広いナット材で変形部を作成していきます。
スロット部分を成形。
スロットピッタリに仕上げました。このあと羽根部分の底辺がブリッジに乗りつつスロット底辺もPU素子に圧が掛かるように微調整していきます。
羽根部分の成形。
磨いて仕上げます。
牛骨材のブリッジピンを御使用されています。プラスチック製は良い感じに歪んできますがボーン材は微調整しないと割れてしまいます。低音弦のみ専用工具で弦溝を拡げていきます。
見分けがつくように低音弦用の2本のみ印を付けておきます。
マーカー部を少し削ってマーキング。
変形オフセットサドルの完成。
オクターブはピッタリあって尚且つPUバランスも問題なく製作できました。
最終的に弦高は6弦12F上で約2.4~2.5mm。
同じく1弦側の弦高は12フレット上で約2.0mm。
全体をチェックしてリペア完了です。変形オフセットサドルでの調整でハイポジションの難解コードもキレイなハーモニーを奏でてくれます。