Gibson Southern Jumbo 2007年製 ナット&オフセットサドル作成交換・ブリッジ弦誘角度調整・バック板タッチアップ補修
近年モノのギブソンSJのリペアです。バック板に経年劣化からか板の伸縮が塗装に影響してきているようでその補修、またこの頃のGibsonはミドルが少しこもったようなトーンの個体が多いですがナット&サドル材を変更して音質の向上改善を狙います。
J-45と違うところは色々あるのですが見た目で言えばクラウンインレイにパラレログラムインレイ・ネックバインディングと装飾が豪華な事ですね。
現状の弦高は6弦12フレット上で約2.8mm。
同じく1弦側の弦高は12フレット上で約2.3mm。
オリジナルは人工素材のナットですのでヴィンテージボーン材(牛骨)に変更して音質の向上改善を狙います。
ハンマーで軽く叩いて外しますが中には接着剤で固められている物もあります。叩いても動く気配がなくネックの負担を考慮して崩し取る事にしました。
ルーター作業。
ニッパーやノミを使用して少しずつ崩していきます。
ナットスロットに付着している接着剤の残りをマイクロノミで除去します。
ナットスロットが仕上がりました。
スラブ材からナットを作成していきます。
ナットスロットにピッタリ収まるように成形した後おおまかなサイズにカットしていきます。
形状を整えます。
ここで軽く磨いておきます。
専用ゲージを使用して正確な弦間隔をはじき出します。
弦溝を切っていきます。荒く削った後、弦を張って弦高の微調整をして仕上げます。
ナットスロットにピッタリと収まっていますね。この仕上げが良いトーンを生みだします。
同じく1弦側。密着度が高く弦振動が良く伝わることでトーンの向上が期待できます。
弦溝角度の微調整などを繰り返してナットが完成しました。
オリジナルサドルは流通品でスロットに対して小さく遊びがあり、グラグラと動きます。弦が乗る支点の仕上げがこれではパフォーマンスを最大限には引き出せないのですね。
スラブ材からサドルを作成していきます。
フラットファイルで溝ピッタリになるように幅の微調整をしてサイドのR加工もキレイに半円状に仕上げます。
スロットピッタリのサドルが出来ました。
ここでフィンガーボードのラジアスを計測しておきます。
ザックリとオリジナルサドルから形状を書き写します。
ルーターでカット。
フィンガーボードと同じラジアスでサドルトップを仕上げます。
オフセットサドルの依頼ですのでイントネーターを使ってオクターブチューニングの位置を計測します
計測したオクターブ補正位置をサドル材に書き写し、各弦ごとにサドルの頂点を削りだしてオフセットサドルを作成します。
磨いていきます。
弦高の微調整です。バイストップを平面に計測してから余分なサドルの底辺を削っていきます。
弦高を下げるとテンションが減ります。1・2弦のみテンション確保のために弦誘角度溝を切り込みます。
オリジナルでも弦誘角度溝加工は施されていますが1・2弦部分だけ伸ばしていきましょう。
専用ヤスリでサドルスロット近くまで溝を切っていきます。
加工完了。
サドルの高さを削って弦高を低くしましたが弦誘角度溝を切り込みテンションは稼げました。
オフセットサドルの完成です。
トラスロッドなど微調整でセットアップの仕上げ。
最終的に弦高は6弦12F上で約2.3mmで調整。
1弦12Fの弦高は約1.8mmまで下げれました。
バックの伸縮部分。塗装に段差が出てきています。
数日かけてラッカーを厚く塗っていきます。
数日掛けてラッカーを充分に乾かした後に仕上げに入ります。余分なラッカーを削り取ります。
サンドペーパーの番数を上げて滑らかにしていきます。最後はコンパウンドでピカピカに仕上げます。
タッチアップ完了です。
全体をチェックしてリペア完了です。ナット&サドル材を変更してジャキっとしたブリリアントなトーンに音質向上できました。中域もこもらず抜けていて、まさしくギブソンの音色です。