Fender USA Jazz Bass 弦高下げ(1弦12F=1mm)セットアップ
現行のJazzBassです。オーナー様は購入時にEMGピックアップに変更されたとのことですがセットアップで1弦12Fで1mmのセッティングにして欲しいとのご依頼をいただきました。
かなり難しいセットアップですがオーナー様のタッチは触るか触らないかくらいとても優しいタッチというのとアンプからアウトプットしたときにバズが気にならなければ生で弾いた時のバズは出てもOKとの事ですのでご依頼をお受けしました。
こちらも購入時にルーターでザグッてもらったようです。確かにこれでネック調整は格段にUPしますね。木地が目立って嫌なので着色もご依頼いただきました。
ラッカー塗装してしまうと今後の調整で剥げて汚くなる所ですのでステインで染色してオイルフィニッシュしていきます。
違和感なく仕上がりました。
オリジナルナット。最近の物はこの色味だとTUSK材でしょうか?オーナー様はブラスナットがお好みとの事ですので新規作成交換します。
ハンマーで軽く叩いて外しますが中には接着剤で固められている物もあります。叩いても動く気配がなくネックの負担を考慮して崩し取る事にしました。
少しずつ崩していきます。
マイクロノミを使用して完全に除去していきます。
ナットスロットに付着している接着剤の残りも除去します。
ブラスのスラブ材からナットを作成していきます。
ナットスロットにピッタリ収まるように成形していきます。
厚み調整完了。
ナットスロットのラジアスを計測します。フェンダーヴィンテージタイプの7.25R。
R処理中のナット。
ギブソン系のフラットな底辺のナットとは違い難度が高い処理です。
キッチリと溝に収まりました。この後、形を整えていきます。
金ノコ等いろんな工具で成形していきます。
String Spacing Ruleで正確に各弦の間隔を写していきます。
溝処理もコンパウンドでピカピカに仕上げていきます。
整形後のナットです。4弦側面から見た様子です。きっちりと溝に収まっているのが確認できます。
同じく1弦側。こちらもきっちりと溝に収まっているのが確認できます。これだけでいいトーンがしそうですね。
ナットが仕上がりました。
12F以降のフレットトップに角度をつけていきます。本来ならばフレット交換時、または作成時に指板自体に角度をつけておく特殊な加工なのですがフレットトップを調整してそのように仕上げていきます。
マーキングしておいたポイントを中心にフレットトップを角度をつけてフラットに仕上げます
すり合わせで出来たフレットトップの角を専用ヤスリで丸くして頂点を出していきます。
すり合わせ時の傷が深い時には#150くらいからはじめて徐々に番目をあげていきます。
スチールウールで磨き最終的にコンパウンドを使用して磨き上げます。
レモンオイルで保湿。
さてここまで弦高を下げるとサドルのテンションも無くなります。全体的なセットアップにネックポケットのシムは欠かせませんね。マホガニーのつき板から厚めのシムを作成します。
薄いつき板ですがシムとしてはかなり厚めで効果は絶大です。
シムの厚み、サドルのテンションなどの調整を繰り返して仕上げていきます。
最終的に弦高は4弦12F上で約1.5mmまで下げれました。
同じく1弦側の弦高は希望通りの12フレット上で約1.0mm。
全体をチェックしてリペア完了です。1弦12Fで弦高1mmなかなか出来ないセットアップですね。ネックの状態も関係しますし基本的にボルトオンでないと難しいでしょうし、何より弾き手のオーナー様の柔らかいタッチがあるからこそのセットアップでした。驚きは私がチェックすると生ではバズっているのですがオーナー様にお渡し時に弾いて頂いたらどのポイントでもバズらない!?というところ。長けたベーシストは驚くほど柔らかいタッチでした。