Martin D-18 ブリッジまわり&PU取付&ピックガード取付
ネックのトラスロッドが回らないノンアジャスタブル仕様の70年代D-18。知人から頂いたという個体ですがピックガードは外されていて弦高も高い状態。ピックガード取付と弦高下げ、PUも取付の依頼です。
それでは各部チェックしていきましょう。
現状は6弦12フレット上で約3.5mmもあります。
同じく1弦側では12フレット上で約3.0mmもあり、これでは弦高が高すぎて引きづらい方もいるでしょう。
ブリッジとサドルです。サドルの余裕も少なく、これでは十分に弦高を下げる事は困難です。ブリッジが比較的厚い事やネックの元起きなどの問題はないため出荷された時から、弦高が高めのギターだったと思われます。弦高を下げるためにはネックリセットするか一度ブリッジを取り外しブリッジの厚みを薄くして再度、取り付ける方法が考えられます。オーナー様と打ち合わせした結果今回はブリッジを薄くするリペアとなりました。
サドルを外したところ。写真では解りずらいですがサドルスロットの仕上げが粗いです。さすがのマーチンも70年代は仕事が良くないのでしょうか?とても残念ですね。
サドルスロットのバリや段差を取り除いていきます。
内部の確認です。ブレーシングの外れ等は大丈夫でした。ピックガードに沿ってトップ板が割れるマーチンクラックと呼ばれる割れが確認できます。
マーチンクラックには、なにやら石膏のようなものが埋められています。
ナイフで石膏を取り除きます。
キレイに除去出来ました。
スプルースのペーストをクラックにすり込んでいきます。
割れがペーストで埋まりました。この後ステインで着色しラッカーを厚塗りしていきます。
ラッカーを数日、乾かした後に盛り上がったところをカミソリで削り取るようにして平面にしていきます。
ピックガード跡の塗装が施されていない部分が近いので水研ぎはせずに塗装面を仕上げていきます。
マーチンクラックの補修が仕上がりました。
ピックガード跡に沿って塗装が盛り上がっています。
塗装の盛り上がりを削って平面に整えておきます。これでピックガードを貼る準備ができました。ピックガードを貼る前にブリッジ作業に取り掛かります。
ラバーヒーターでブリッジを温めて接着剤を溶かしていきます。
十分に温まり接着剤が柔らかくなったところでナイフを差込みブリッジを剥がします。
ベルトサンダーでブリッジ底辺を削っていきます。ブリッジ横の部分で3mmあったのを1.5mmまで薄く仕上げました。
接着剤にはニカワを使用してブリッジを取り付けていきます。
負荷のかかるポイントなのでクランプしたまま72時間待ちます。
クランプを外した後ブリッジピンホールに詰まったニカワをリーマーで除去します。
薄く仕上がったブリッジです。これでブリッジまわりは完了しました。
ヴィンテージタイプのピックガードをチョイスしました。オーバーサイズのピックガードなので余分な所をカットします。
カットした所を面取りするようにサンドペーパーで滑らかに仕上げます。
最後にコンパウンドで磨きます。
オーバーサイズのピックガードなのでマーチンクラックも少し隠すように位置を調整してピックガードを貼り付けます。
さてPUの取付です。エンドピンが固くて外れないのでエンドピングリップを使用して外します。
12mmドリルビットでエンドピンジャック穴を開けます。
PUのケーブルを適切な長さにカットします。
ハンダアームを利用してハンダ付けしていきます。
ケーブルも適度な長さになりました。これで少しは軽くなりますしケーブルは短い方がサウンド的にいいのは言うまでもありません。
調整後は6弦12フレット上で約2.1~2.2mm。
同じく1弦12フレット上で約1.6mmまで下がりました。
サドルスロットの除去もおこなったためレスポンスも良くなりマホガニーらしい甘いトーンで鳴っています。