Martin D-28 ボディ破損修復リペア
衝撃で大破してしまったボディの修復リペアです。各部の破損状況を確認していきます。ボディバックにエンドからショルダーにかけて亀裂が走っています。
エンド部の割れの様子。
バインディングもはがれています。
割れていない方のバックもサイド板から剥がれてしまっています。
解りづらいですがブレーシングも割れています
ライニングにも亀裂が入っています。
チェックした結果トップ板やネックには異常はありませんでした。1度バックを剥がしてブレーシングや割れをリペアしてボディを組み直すことにしました。
まずはバインディングをはずしていきます。外れにくいときはドライヤー等で熱を加えて作業を進めていきます。
現状のセンターにラインを入れておきます。
ネックエンドにもセンターラインを入れておきます。
それではバックを外していきましょう。スチームアイロンの蒸気を利用して接着剤を溶かしながらナイフを差込みライニングとバック板を剥離していきます。
バック板が外れました。
ライニングは破損が激しかったため、新しいものに交換します。ラバーヒーターで熱を加え少しずつライニングをサイド板から剥がしていきます。
幸いにも強い衝撃が加わったにもかかわらずトップに割れはなくブレーシングの浮き等もありませんでした。
ルーターでライニングの残りカスもキレイに除去します。
サイド板の準備は整いました。
ネックブロックに残る接着剤などもキレイに除去して整えておきましょう。
新しいライニング材です。あらかじめ割れ止めに当たる部分を削っておきます。
ライニング材を接着していきます。
この洗濯ばさみは押さえる部分がプレーンになっているのでサイド板やライニングを傷めずにクランプすることができます。
バック板の修復に入りましょう。まずはブレーシングの欠けた部分を接着していきます。すべての割れたパーツが残っていたので助かりました。
ブレーシングは合計3本が割れてしまっていました。固着には24時間かけ接着後にヤスリで、割れなど無かったかのようにまで整えていきます。
次はバックの割れリペアです。スプルースでパッチ材を作成しました。
パッチを貼り割れた部分を繋ぎ合わせていきます。
繋ぎ合わせの部分にある、わずかな段差を修正していきます。
ライニングにブレーシングが乗るポイントには切れ込みを入れておきましょう。
スプールクランプでバックをしっかりと接着していきます。
ボディの歪みがほとんど無かったため思ったよりすんなりといきましたがギターを作成するときよりも難度が高い工程です。実際には少しずつ貼りあわせてピッタリに接着していくという時間のかかる作業です。
ほとんどピッタリにバック板が装着できたのであまり出番は無かったのですがこのルーターとジグでバインディングとパーフリングの溝を掘っていきます。
このように使用するのですね。実際にはほとんどの箇所でヤスリで少し整えるといった感じで溝工程は終了しました。
バインディングラミネーターでパーフリングを接着しているところ。マーチンのオリジナルデザインと同じになるように極薄のプラスチックを貼りあわせてバインディングを作っていきます。
バインディング専用の接着剤で取り付けていきます。剥がれてこないようにテープで留めながら接着していきます。
このようにバインディング全体をテープで留めて24時間固着を待ちます。
固着したらバインディングのはみ出た部分をスクレーパーでツライチにしていきます。
ツライチになってきました。これで8割OKって感じです。
サイド部分もツライチに仕上げます。
バインディングの仕上げと共にバックの塗装も少しサンディングしました。バックとサイドの一部の塗装をオーバーラッカーにします。
塗装工程に入りました。サンディングシーラーを3回ほど塗ったあとサンディングした様子です。
ネックブロックに沿って割れた箇所。塗装を下地まで落として接着作業したところなのでローズウッドの導管が目立ちます。
導管が目立つ部分には目止め処理を行います。フィラーをすりこみサンディングといった工程を繰り返します。
クリヤーラッカーを厚塗りしていきます。
最後の塗装から7日ほど乾かした後に塗装面をサンディングしていきます。十分に乾かさないとうまくいかない工程ですので焦らず時間をかけて乾かします。
ペーパーは#240くらいからはじめて塗装面の段差をなくし#400#800と徐々に番数を上げていきます。
この段階では#1200~#1500くらいです。
ペーパーでの仕上げは#2000で水研ぎです。
コンパウンドで仕上げて塗装も完了です。バフでピカピカに磨き上げていきます。
取り付けられていたPUなどを装着してリペア完了です。オーバーラッカーしてあるので音が重くなってないか心配でしたがマーチンらしい音を奏でるギターに仕上がりました。オーナー様にチェックして頂いた時にも元どうりの音ですとの言葉を頂きました。